美食 淡路島

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Osteria della Capanna

090-9257-9949

淡路市佐野 235

11時30分〜15時、18時~22時  ※火・水・木曜休、月曜の夜休

Osteria della Capanna
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Osteria della Capanna

090-9257-9949

淡路市佐野 235

11時30分〜15時、18時~22時  ※火・水・木曜休、月曜の夜休

LA CASA capanna

 打ち寄せる波の音と小鳥のさえずりに誘われ、古民家を改装した店のなかへ。窓の向こうには穏やかな“淡路ブルー”。記憶の片隅にふと、似た風景を探してしまう。そう、イタリアの海沿いにある、小さな村へやってきたようなあの感覚…。
 「イタリアに住んでいた頃に体感した“質素だけれど心は豊かな暮らし”が、肌に合っていました」と話すのは、エミリア=ロマーニャをはじめ北イタリアのレストランで経験を積んだ池田敬之シェフ。奥様・幸子さんとふたりして兵庫・芦屋川でオステリアを営んでいたが「イタリアの田舎みたいな場所を探し求め、辿り着いたのが淡路島です」。19年6月、山に囲まれ、海辺に面したこの地に移転を決めた。
 敷地内に開墾した畑では、一年を通して100種近くの野菜やハーブ、フルーツなどを栽培。さらに、銃猟免許(第二種)を持つシェフは、マガモやキジバトといった野鳥獣を捕獲するハンターの顔も持つ。「豚と牛、魚、小麦粉以外の食材はほぼ、自給自足ですよ」と笑う。

料理は全て夜7500円(全7皿)より。前菜は、洲本の魚屋で仕入れた鰆をサラダ仕立てに。鰆の皮目を軽く炙り、畑で栽培したマイクロリーフを添えて。器は五色町にある窯元「柚季窯」の片山恵さん作

メイン料理「山鳩のグリル」は、赤ワインやマルサラ酒を用いたコク深いソースで。山鳩は空気銃で仕留め、ソースに用いる白イチジクは自家栽培。さらに、山で収穫した天然キノコ「アカヤマドリ」は干して旨味を凝縮

パスタは、エミリア・ロマーニャ州の名物、帽子を象った「カッペラッチ」。詰め物は定番のカボチャだそうで、同州・フェラーラの修業先『ラ・ローザ』のマンマに教わったという。畑で採れたカボチャは焼いて甘みを引き出しピュレ状に

アーモンドを用いた自家製の焼き菓子「アマレッティ」を潰したものや、パルミジャーノ・レッジャーノなどと合わせた“甘じょっぱい”具を、打ちたての生地で包んでいる。山で採ってきたジロール茸はソテーに。その甘い香りと相性は抜群

 ある日の夜のおまかせコース。前菜には、鰆のサラダ仕立てを。皮目を軽く炙った鰆は、じわっと脂の甘みが広がり、アマランサスをはじめ摘みたてマイクロリーフの鮮烈な香り、自家製カラスミの塩気がいいアクセントに。ほんのり広がる醤油のようなコクは…?「手作りの魚醤・コラトゥーラなんです。仮屋漁港に大量のイワシがやってきたことがあり、塩をして熟成させた5年物」と、イタリアの調味料にいたるまで、できる範囲で手作りを心がける。
 メインには、シェフが仕留めた山鳩(キジ鳩)を。あえて熟成はさせず、フレッシュな状態のモモ肉や胸肉、レバーなどをグリル。赤ワインや干しイチジクの果実味を生かした艶やかなソースが、山鳩のあっさりとした肉質を引き立たせている。シェフ曰く「秘密の場所で」採ってきたという天然のキノコ「アカヤマドリ」の滋味が渾然に。
 野菜は採れたて。野山を駆け巡り大空を舞うジビエは使う分だけ。地素材を慈しみ、精密な技をもって作り上げる。だからこそ、皿の中の要素は自然と絞り込まれ、主素材の存在感が際立つのだろう。

ドルチェの「ザバイオーネ」は、卵黄、砂糖に洋酒を効かせたリッチなクリーム。ヘーゼルナッツのケーキを添えて。濃厚な甘みの中に、赤ワインのスキッとした酸味が響く

自家製の調味料や保存食の数々。左から、オリーブ塩漬け、粒マスタード、コラトゥーラは2021年に 仕込んだものと、熟成5年目のもの。このほか、牛の乳を使ったフレッシュチーズ「ストラッキーノ」なども手作りする

池田シェフが仕留めたヒヨドリは、内臓も余すところなく用いたパテに。自家製パンにのせて味わえば、澄みきった風味に続き、優しい旨味が広がる

耕作放棄地を池田シェフ自らが開墾。畑では、秋ナスの最盛期。そのほか、フランス原産のジャガイモ「シェリー」をはじめ、紅はるか、ピーマン、玉ネギなど。温州みかんやレモンも栽培。「ここに引っ越してきてから、生ゴミは微生物の力を借りて全て畑の堆肥にしています」。

庭では鶏を平飼いしていて、産みたて卵も料理には欠かせない。また、鶏糞を発酵させて有機肥料を作るなど、循環型農業を実践する。

今、行きたい 至極の3店