美食 淡路島

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fuku

0799-43-2001

南あわじ市市青木110-13 アワジ花ホテル東館1F

12時~12時30分最終入店(土・日・祝日のみ)、18時~20時最終入店

火・不定休

fuku
京の名店で培った技と漁港通いの目利きが生む淡路流の端正なおまかせ。
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fuku

0799-43-2001

南あわじ市市青木110-13 アワジ花ホテル東館1F

12時~12時30分最終入店(土・日・祝日のみ)、18時~20時最終入店

火・不定休

fuku

 午後1時。割烹「fuku」店主・服部洋志さんの姿は、昼網の競りで賑わう由良漁港にあった。生簀の中で悠々と泳ぐ真鯛に手を添えながら、真剣な眼差しをみせる。「背と腰から尻尾にかけて。その2箇所をそっと触り、張りの良し悪しを判断します。肥えているかどうかなど見た目も大事ですし、人を睨みつけるような“目力”があるヤツはいい魚の証ですよ」。仕入先「市原水産」の専務に教わったというあらゆる魚の目利きを、服部さんは「7年通い続けていますが、最近になってようやく納得のいく見極めができるように」と嬉しそうに話す。
 南あわじの宿に生まれ育ち、幼少の頃から調理場をうろつき回り、板前さんの仕事をみて育った服部さん。京都の名料亭「菊乃井」で7年間、日本料理の土台をみっちり習得した後、祇園の名割烹「大渡」では、ライヴ感あるカウンター割烹の極意を学ぶ。京都で培った技をもって2016年、地元で独立することにブレはなかった。「淡路島にある本当に素晴らしい食材の凄さを、知っていただきたいのです」と、優しい表情をみせる。

台風一過の由良漁港では、4日ぶりに漁が行われた。「鮮魚の仕入れはいつも「市原水産」さんで。専務にあらゆる目利きを教わりました」と服部さん。「勝手に何でももっていけー」っと威勢のいい専務・市原隆さん。「ほんまにいい食材って、意外と地元の方は食べていらっしゃらない。だから毎日のように漁港へ出向き、まずはとっておきの鮮魚を仕入れるところから」と服部さんは目を輝かせる

 料理はコースのみで全10品ほど。店にある生簀で最低1日は泳がせる真鯛、この日は寝かさずしてお造りに。その一切れを口に運ぶと、程よい弾力と艶やかな舌触りを感じ、噛むほどに強靭な旨みが広がりゆく。一方で、沼島で揚がったカマスは藁の煙でスモーク。造りと焼物の間のような、ねっとりとした半生の質感が堪らない。カマスに添えられた、キュウリと土佐酢からなるソースの清新な後味が口福を誘う。「こんなカマス、島で初めて食べた!って驚かれる地元のお客様も多いです」と服部さん。その味わいの感動が一皿ごとに宿る。
 コースの後半、カウンター前にやってきたのは朝、由良で揚がった伊勢海老。バチバチッと暴れる活ものを、目の前で瞬時に捌いて炭床で炙りに。刷毛でサッと醤油を塗れば、ふと郷愁さえも感じる芳しさが立ち込める。ミディアムレアの身を頬張れば、しぶとい旨みが口中を占拠するのだ。
 毎日のように由良や灘など漁港へ出向き「都会へ出荷する前に、自分が最高やと直感した魚を選ばせてもらいます」。仲買人との信頼関係も、服部さんのひたむきさありきだろう。名店仕込みの丁寧な手仕事をもって挑む、シンプルでいて端正な味づくり。
 忘れられない“淡路島”の味の記憶が、ここから生まれる。

料理は全ておまかせコース12000円(全10品。税・サ込)より。お造り2種。3日寝かせたアオリイカは、細やかな隠し庖丁が入る。シャクッと繊細な食感でいて、濃密な甘みがねっとり絡む。真鯛は脂の旨みが濃厚

カマスの焼物。藁焼きの炎で「身は1秒、皮目は香ばしく」炙る。その繊細な火入れにより、刺身と焼物の中間のような独特の質感

淡路ビーフの炭火焼。1時間以上、焼いては休ませてを繰り返したフィレ肉は、スッと歯が入る柔らかさ。薄めに味を調えただし醤油の清らかな旨みが、クリアな肉汁のエキスとハーモニーを奏でる

お客の目の前で、活の伊勢海老を捌き、炭火炙りに。これぞ躍動感溢れるカウンター割烹の醍醐味

伊勢海老の炙り。醤油と酢橘の搾り汁、昆布とカツオだしからなるタレを塗り、ミディアムレアに仕上げる

海水を積んだ軽トラで持ち帰った活魚は、店の生簀に入れて活け越しに

アフリカンチェリーという材木を用いた一枚板のカウンターに、淡路の土を用いた土壁が映える。店は、南あわじ「アワジ花ホテル」の1階に立地

服部洋志さん。調理師学校を卒業した後に、京都「菊乃井」に入社。その後は「大渡」で2年ほど研鑽を積み、30歳で淡路島に戻り翌年2016年に独立した

今、行きたい 至極の3店