美食 淡路島

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地魚料理 海山

0799-26-1212

洲本市本町4-2-35

18時~21時

不定休

地魚料理 海山
京の名店で培った技と漁港通いの目利きが生む淡路流の端正なおまかせ。
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地魚料理 海山

0799-26-1212

洲本市本町4-2-35

18時~21時

不定休

地魚料理 海山

 「親父が仕留める由良の魚介を、料理として出すのが夢でした」。
 洲本にある地魚料理の店「海山」。大将の山家孝介さんは、伝説の庖刃工芸士・坂下勝美さんが手がけた立派な和包丁を携えながら、熱い眼差しをみせる。親父とは、"マサさん"の名で知られる山家正明さん。素潜り漁が盛んな由良港で、50年以上のキャリアを誇る腕利きの素潜り漁師だ。「潜りは週4日、冬場は波が穏やかな日だけやな。1日4時間の漁やけど、2時間半もあればこんもり獲れますわ」。初夏に旬を迎えるムラサキウニや、夏の名物・赤ウニ、さらにワカメやアワビ、ナマコ、大振りのマダコなど、四季を通してあらゆる魚介を、ウェットスーツに水中眼鏡というシンプルな装備だけで捕獲する。
 息子の孝介さんは、「由良の恵みを、ウチでしか味わえない一品に仕立てます」と、なおも語りは熱い。季節のおまかせコースは、鱧料理にて幕を開けた。鱧の卵や肝、浮袋(胃袋)などを玉子とじにしたその上に、湯引きの鱧を盛り付けて。一口大サイズながら、鱧を余すところなく味わう一品だ。

庖刃工芸士・坂下勝美さんによる立派な刺身庖丁が、存在感を放つ。坂下さんの和包丁は、一流の料理人たちから絶大な評価を受け、予約は400本待ちとも言われる

店主の山家孝介さん(左)。素潜り漁師の父・マサさんこと正明さん。息子への思いを尋ねたところ「我がの好きなことをしたらえぇ」と嬉しそうだ

マサさんが仕留めた4kgのマダコは伝通煮に。湧き水と醤油、淡路島の海水の塩味だけを使い、時間をかけて煮て、冷ます過程で味を含ませる

マサさんが獲った赤アワビは「アワビの肝焼き」にて提供。「火を通したら柔らかくなるのが赤アワビです」と孝介さん

 お造りにも、丁寧な手仕事が潜む。「イカった刺身はほとんど出しません」と孝介さん。素材の力を最大限に引き出すためのひと仕事が、孝介さんの真骨頂。いずれの地魚にも「セオリー通りではない」血抜きと脱水、熟成をほどこす。1週間寝かせた真鯛は、艶やかな身質としぶとい旨みが印象的。1.5kgサイズの丸々肥えたシマアジは、2週間熟成させているとは思えない、シャクッとした歯ざわりで、噛むほどに清新な脂の甘みが滲み出る。マサさんが仕留めた赤アワビは新鮮なものを。それら旬魚の造りは、飲んで食べるペースに合わせて1ネタずつテンポよく供してくれるのが嬉しい。
 この店のスペシャリテ「アワビの肝焼き」は、マサさんが生み出した漁師料理。小鍋には、アワビの肝、地元の湧水、地元の合わせ味噌からなる肝ソースがグツグツ煮えたぎっている。アワビの切り身がこんもり入り、さらに。「女将と娘が今朝、獲ってきた布海苔(ふのり)も入れています」。アワビはシャクッと歯ざわり良く、布海苔はコリコリとした独特の食感。煮詰めるほどにコクが増す肝ソースと共に、山家ファミリーの馳走の心が、じんわりと染み渡る。 コースの終盤には、4種の酢を使いわけるシャリの握り、締めには魚介のエキスが凝縮した一口ラーメンが登場することも。「親父が命懸けで獲ってきてくれた魚介を、僕は心して料理するのみです」。この店には、洲本まで足を延ばすべき理由が、いくつもある。

料理はすべて、季節のおまかせコース1万1000円~(全11品以上)より。マサさん直伝「アワビの肝焼き」は、グツグツと湯気立つと共に磯の香りが充満。肝のほろ苦いコク、合わせ味噌の深い旨みが混じり合う

この日の前菜は「鱧の湯引きと卵」。鱧は客の前で骨切りをするところから。卵や浮き袋、肝やハツは鱧の骨からひいただしで炊き卵とじに

お造りは、由良の地魚5種。(左上から時計回りに)1週間寝かせた真鯛、シマアジは2週間、メイチ鯛は1週間熟成。ヒイカと赤アワビはフレッシュなまま提供。「漁港の近くだからといって、鮮度一辺倒ではダメです。それぞれの魚のポテンシャルを活かしきるのが料理人の仕事」と孝介さん

由良港には現在、90人の素潜り漁師が在籍。「グループで行動をします。ウチの場合、素潜り漁師6人で船に乗り、漁場へ。場所は教えられないね」とマサさん。素潜り専用の船は20隻、さらに底引き網40隻、一本釣りの漁船50隻を有する港だ

今、行きたい 至極の3店