美食 淡路島

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割烹 はと

0799-33-0001

洲本市五色町都志万歳523-2

12時~14時、18時~22時

火曜 休

割烹 はと
創業120余年。温もりある名割烹で味わう端正かつ頃合いの日本料理。
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割烹 はと

0799-33-0001

洲本市五色町都志万歳523-2

12時~14時、18時~22時

火曜 休

割烹 はと

 島の西海岸、都志港近くにある「割烹 はと」。1897年初頭、この地で料理宿として創業し、120余年を迎えた。檜のカウンターの中に立つのは、5代目店主・吉田忠司さん。かつて大阪・ミナミにあった日本料理「川富」で修業。家業を継ぐと同時に、完全予約制の割烹へと大きく舵を切り22年目。その腕の確かさは、煮物椀を味わえば瞭然だ。
 口のなかで膨らむ、深いコクと香り、心安らぐ余韻。だしの底味にあるのは道南産の真昆布。ゆっくりと火にかけて旨みを引き出したところに、常に削りたての指宿産カツオ節(本枯節)を打つ。「南あわじの『センザン醤油』」の薄口醤油で仕上げています」と吉田さん。清らかで深い味わいの一番だしと、都志港揚がりのワタリガニを用いた真薯の滋味が、口の中で溶け合う。

店から車で5分とかからない五色浜。この地で「自凝雫塩(おのころしずくしお)」を作る、末澤輝之さんの元へ。「水や塩は人間にとって根本的に大事なものです」と末澤さん

満潮時の海が澄んだ状態を見計らい、播磨灘の海水を取水する。海水の濾過工程や、鉄釜で炊き上げる濃縮、結晶化、杉樽での寝かしなど丁寧な工程を経て、鉄分やミネラルを多く含んだ塩が完成する

「割烹 はと」で用いる塩は、定番の「自凝雫塩」と、一番最初に結晶化する稀少な結晶塩。自凝雫塩は、尖がりがなく“ 甘い” 。椀物のだしにあたりをつける時、いつもそう感じるそうだ。粒目が大きい結晶塩は、素材がもつ旨み、脂の甘みなどを見事に引き出してくれるという

凛とした一枚板のカウンター。淡路の土を用いた土壁が、心温まる雰囲気を醸し出している。日本の伝統工芸品・へら鮒の和竿(竹竿)が存在感を放つ

 「食材はもちろんですが、調味料一つをとっても、できる範囲で淡路島のものを」と吉田さん。向付「鰆の塩タタキ」は、脂のりが良い鰆を、稲のワラで軽く炙る。味の土台には、地元・五色浜で鉄釜と薪火で炊き上げる「自凝雫塩(おのころしずくしお)」の結晶塩を。尖りがないまろやかな甘みが、鰆の脂のクリアな旨みを一層、際立たせている。「今日の鰆は、福良の釣りものです」と言うように、片道40分かけて福良漁港に出向く。その仕入れは、鳥飼漁港や都志港の馴染みのある魚屋でも。「毎日、仕入先で食材を手に取りながら献立を考えます」と吉田さん。この日、仕入れた厚みのある鮑は、大根をのせて蒸し器で3時間。身はすっと歯が入る柔らかさ。煮汁の最後の一滴まで、淡路島の豊かな恵みを余すところなく味わい尽くしたい。
 強肴には淡路ビーフの炭火焼が供され、また新蕎麦の時季には吉田さんによる手打ちの蕎麦が登場することも。「ちょうどえぇところで食べ終わっていただける加減を大切にしています」とにこやかに話す。
 素材の持ち味を生かす日本料理の基本にあくまでも忠実に。「季節ごとの淡路にしかない魅力を感じてもらえれば」。正統派でいながら一本、芯の通った料理の数々はもとより、物腰の柔らかい吉田さんの人柄を知れば、次の予約を取って帰りたくなるに違いない。

懐石コース1万円(全9品)の先付は「人参ムース 由良のウニ ジュレがけ」。冬は黒ウニ(ムラサキウニ)を、夏場は赤ウニを用いる。人参ムースの透き通った甘みと、ウニの濃密な味わい、だしのジュレの旨みが調和する

椀物は「ワタリガニの真薯 清汁仕立」。松茸と三つ葉を添え、吸口には黄柚子を。懐石コース1万円より

「鰆の塩たたき」は懐石コース1万円より。「この辺りは鰆の名産地。身が痩せる夏以外は、キメの細かい脂が乗っていて美味しいんです」と吉田さん。器は、唐津焼作家・丸太雄さん作

「蒸し鮑」は懐石コース1万5000円(全9品)の中の一品。鮑に酒をたっぷりとかけて3時間蒸し上げた。その身はふっくら柔らか。鮑のエキスを纏った冬瓜が名脇役だろう。夜のお食事のみ、サービス料5%別途

「栗名月の八寸」(懐石コース1万円より)。栗と柿の白地掛け、月に見立てた銀杏、マナガツオの西京焼き、稲穂には素揚げにしたムカゴ

今、行きたい 至極の3店